女性を好きなことを誰にも話していない。カミングアウトしないまま過ごすのはおかしい?
自分では女性に惹かれることが分かっている。でも家族にも友達にも職場の人にも、そのことを話したことはない。周りから恋愛の話を振られても適当に流して、女性を好きになった経験についても自分の中だけにしまっている。
そんな状態が長く続くと、ふと「ずっと誰にも言わないままでいいのかな」と考えることがあります。
SNSなどでカミングアウトした人の話を見ると、自分もいつか話した方がいいような気がする。一方で、今の人間関係が変わるくらいなら別に言わなくてもいいとも思う。話したいのか、話さなければいけないと思っているだけなのか、自分でも分からなくなることもあるでしょう。
「彼氏とかいないの?」
「今はいないよ」
「じゃあどんな男の人がタイプ?」
「うーん、あんまり考えたことないかな」
こうした何気ない会話のたびに、本当のことを言っていないような感覚が残る人もいます。
実際には彼氏がいないのだから嘘ではありません。それでも女性を好きなことを知っている自分からすると、自分の大事な部分だけを会話から外しているように感じることがあります。
反対に、聞かれるたびに自分のセクシュアリティまで説明しなければならないのも違うと感じる人もいるでしょう。
「自分を偽っている」ことは、
本当に同じでしょうか。
セクシュアリティは全員に説明しなければならないものではない
レズビアンやビアンであることを自分の大切な一部だと感じる人もいれば、恋愛対象はあくまでプライベートな情報の一つだと考える人もいます。
たとえば職場の人に、休日の過ごし方や家族との関係、過去の恋愛をすべて話しているわけではないでしょう。それと同じように、女性を好きなことについて「この人には話さない」と決めることもできます。
カミングアウトしていないからといって、自分の気持ちまで否定しているとは限りません。
自分の中では女性が好きだと分かっていて、恋愛もしている。ただ周囲には話していない。それも一つの状態です。
「今は言いたくない」
今の生活に大きな不満はなく、セクシュアリティについて周囲へ説明する必要性も感じていない。聞かれても特に話したいとは思わない。
その場合は、無理にカミングアウトする理由を探さなくてもいいでしょう。
「言いたいけれど言えない」
本当は仲の良い友達に彼女の話をしたい。好きな女性ができたことも話したい。でも嫌われたり、距離を置かれたりするのが怖くて言えない。
こちらは「話さない」という同じ状態でも、本人が感じている苦しさは少し違います。
この二つを無理にどちらかへ分類する必要はありません。ただ、「私は別に話したくない」のか、「本当は話したいけれど反応が怖い」のかを自分の中で考えてみると、今抱えているモヤモヤの正体が少し見えやすくなります。
カミングアウトするかどうかより先に、自分は何を苦しいと感じているのかを知る。そこから考えても遅くありません。
「誰にも言わない」か「みんなに話す」かではない
家族には言わないけれど親友は知っている。職場では話さないけれど、プライベートでは彼女の存在を隠していない。そんな形でも構いません。
一度誰かに話したからといって、次は家族、その次は職場というように範囲を広げる必要もありません。
誰にどこまで自分のことを話すかは、人間関係ごとに違っていていいものです。
恋人ができると「言わない」が少し難しくなることもある
一人でいる間は特に困らなかったのに、女性と付き合い始めてから周囲への説明に迷うようになることがあります。
休日に誰と出かけたのか聞かれる。旅行へ行った話をしたい。誕生日にもらったプレゼントの話をしたい。それなのに彼女の存在を隠そうとすると、普通なら何気なく話せる出来事まで説明しにくくなることがあります。
だからといって、恋人ができたら必ずカミングアウトしなければならないわけではありません。
ただ、「自分が話したくない」のか、「彼女の存在を隠すことがつらくなってきた」のかは、ときどき考えてみてもいいでしょう。
彼女と考え方が違うこともある
自分は誰にも話したくないけれど、彼女は友達に普通に恋人の話をしているということもあります。反対に、自分はオープンにしたいのに彼女は知られたくない場合もあります。
付き合っている二人のことなので、片方だけの判断でSNSへ写真を載せたり、共通の知人へ関係を話したりすると相手を困らせる可能性があります。
カミングアウトについては「私はどうしたい?」だけでなく、恋人がいる場合は「あなたはどこまでなら大丈夫?」も確認しておきたいところです。
今の自分に近いのはどれ?
答えを決めるためではなく、今の気持ちを整理するための目安です。
「身近な人に話す」以外の居場所があってもいい
家族や昔からの友達だからといって、必ずセクシュアリティについて話しやすいとは限りません。むしろ関係が近いからこそ、今までと見られ方が変わるのが怖いということもあります。
そんなときは、日常の人間関係とは別に女性を好きな女性と話せる場所を持つ方法もあります。
レズビアンやビアン向けのコミュニティ、イベント、SNS、掲示板などには恋人募集だけでなく、友達や話し相手を探している人もいます。そこで無理に自分のことを詳しく話す必要はありませんが、「女性を好き」という前提を一から説明しなくても話せる相手がいるだけで楽になる人もいるでしょう。
身近な人にはまだ言えない。でも誰かとは話したい。その二つは矛盾しません。
誰かに話してみようと思ったときに考えたいこと
カミングアウトするための条件ではありません。自分が安心して話せそうかを見るための確認です。
- 自分はなぜその人に話したいと思った?
- その人は普段、性的マイノリティについてどんな話し方をしている?
- 話した内容を他の人へ広めないと信頼できる?
- もし予想と違う反応だったとき、少し距離を取れる相手?
- 今すぐ話したい? それとも「いつか話さなきゃ」と焦っているだけ?
女性を好きな自分であることに変わりはありません。
話すことも、話さないことも、自分で選んでいい
カミングアウトしたことで気持ちが楽になる人はいます。恋人の話を隠さずできるようになったり、自分のことを知ってもらえたと感じたりすることもあるでしょう。
一方で、誰にも話していなくても穏やかに生活している人もいます。
どちらがレズビアンやビアンとして正しいというものではありませんし、今決めたことをずっと続ける必要もありません。
今は話さない。いつか一人には話してみたい。恋人ができたら考える。家族には言わないけれど友達には話す。その時々で自分が安心できる形を選んで構いません。
大切なのは「カミングアウトした方がいいのかな」と周りの基準で急ぐことではなく、自分は誰とどんな関係でいたいのかを考えること。
女性を好きなことを誰にも話していないとしても、その気持ちまで誰かに認めてもらわなければ本物にならないわけではありません。話したくなったときには話す、まだ話したくないなら話さない。その選択も含めて、自分のペースで考えていけばいいでしょう。