いまさら人に聞けない?私、ビアンなのにビアン用語知らない…そんな人向けビアン用語集
「フェムタチです。ネコ寄りリバの方だと嬉しいです」
募集掲示板でこんな文章を見つけたら、どんな女性が相手を探しているのか想像できるだろうか。
フェムタチは何となくわかる。でもネコ寄りリバって、ネコなの? リバなの? そもそもフェムタチの「フェム」と「タチ」は別々の話?
ビアン向けの掲示板やSNSを見ていると、普段の生活ではまず使わない言葉が次々に出てくる。
しかも厄介なのが、検索すれば一応意味は出てくるのに、それだけでは募集文の意図がつかめないこと。
「フェムは女性らしい人です」と説明されても、フェムタチを募集している人が何を求めているのかまではわからない。
この記事では、言葉を一つずつ暗記するよりも、実際のプロフィールや募集文をどう読むかに重点を置いてみたい。
まず知っておきたい。プロフィールには別々の情報が混ざっている
例えば、こんな自己紹介。
28歳、フェム寄り中性。ネコ寄りリバです。フェムの方がタイプ。友達からでもよろしくお願いします。
一見すると専門用語だらけ。でも、よく見ると書かれているのは違う種類の情報だ。
「フェム寄り中性」は自分の見た目や雰囲気。「ネコ寄りリバ」は親密な関係での好み。「フェムの方がタイプ」は相手に求める外見の傾向。そして「友達からでも」は、どんな関係から始めたいかという希望。
ここを全部ひとまとめにしてしまうと話がややこしくなる。
特に混同しやすいのが、見た目を表す言葉とタチ・ネコのような役割を表す言葉。どちらもプロフィールの短い欄に並んでいるから、つい関連づけて考えてしまう。
でも、実際には別の情報だ。
「フェム・ボイ・中性」は見た目の話。でも写真だけでは決められない
フェムと聞いて、ロングヘアにワンピース、しっかりメイクの女性を思い浮かべる人は多いと思う。
もちろん、そういうフェムもいる。
ただ、ショートヘアでパンツスタイルのフェムだっているし、普段はメイクをしない人もいる。
フェムは女性らしいファッションや雰囲気、ボイはボーイッシュなスタイル、中性はその中間的な印象を表す言葉として使われる。
ここで少し考えてみてほしい。
白いTシャツに黒のワイドパンツ。髪は耳が出るくらいのショート。アクセサリーは小さなピアスだけ。
この女性はボイだろうか。それとも中性?
写真だけなら判断が分かれそうだし、本人はフェムだと思っている可能性もある。
つまり、見た目の分類はかなり主観的。
「中性好き」と書かれていても、すっきりしたショートヘアが好きなのか、メンズライクな服装が好きなのか、それとも雰囲気の話なのか。そこまでは読み取れない。
フェム寄り中性、ボイ寄り中性って?
「中性だけど、どちらかといえばフェムっぽい」
「ボーイッシュな服が多いけど、ボイと言い切るほどではない」
そんな感覚を伝えるための表現。
境界線を細かく定めた言葉ではないので、本人がどんな雰囲気をイメージしているかが中心になる。
ここで大事なのは、フェムだからネコ、ボイだからタチとは決まらないこと。
この先の用語を読むうえでも、これは分けて考えたい。
「フェムフェムが好き」と「フェムタチが好き」は全然違う
似たような言葉なのに、指しているものが違う。
フェムフェムはフェム同士の組み合わせ。ボイフェムならボイとフェム、ボイボイならボイ同士。
例えば「フェムフェムのカップルに憧れる」という文章なら、女性らしい雰囲気の二人が付き合っている姿をイメージしているのだろう。
一方で「フェムタチが好き」は、フェム系の女性でタチの立場を好む人がタイプ、という話になる。
二人の組み合わせを表しているのか、一人の女性の特徴を表しているのか。
似ているけれど、そこが違う。
ちなみにフェムフェムの二人が、どちらもネコとは限らない。二人ともリバかもしれないし、タチとネコに分かれているかもしれない。
見た目の組み合わせから、その二人の親密な関係まで想像するのは早計だ。
タチ・ネコ・リバ。知っている人ほど「男役・女役」で覚えていない?
ここは少し長めに話したい。
タチは性的な場面で相手に働きかける側、ネコは受ける側、リバは両方を好む、あるいは両方に対応する人を指す。
基本的な意味はこれでいい。
ただし「タチ=男役」「ネコ=女役」と覚えると、実際の恋愛では話が合わなくなることがある。
例えば、普段のデートでは彼女に行き先を決めてもらうのが好きで、甘えることも多い。でも性的な場面ではタチ。
逆に、旅行の計画もレストランの予約も率先してやるのに、親密な場面ではネコ寄り。
どちらも十分あり得る組み合わせだ。
日常生活でリードすることと、性的な場面での好みは同じではない。
そして、タチ・ネコという言葉自体も、人によって使う範囲が少し違う。性的な役割に限定している人もいれば、親密な場面でのリードの仕方まで含めている人もいる。
だから、プロフィールの「タチ」だけを見て、その人の性格や恋愛スタイルを全部わかった気になるのは危ない。
リバって書いてあれば、どちらでもいいの?
ここも勘違いしやすい。
リバは両方を好む人を指すけれど、常に半々という意味ではない。
相手によって変わる人もいれば、どちらも好きだけれど片方のほうが落ち着く人もいる。
そこで登場するのが「寄りリバ」。
「ネコ寄りリバ」は、ネコなのかリバなのか
最初の募集文に戻ってみよう。
フェムタチです。ネコ寄りリバの方だと嬉しいです。
ネコ寄りリバは、両方の役割を好む、または対応できるけれど、ネコのほうに好みが傾いているという意味。
タチ寄りリバなら反対にタチのほうが好み。
ここで「だったらネコって書けばいいのに」と思う人もいるかもしれない。
でも本人にとっては、ネコだけを希望しているわけではないことが重要なのだろう。
「普段はネコのほうが好き。でも相手や気分によってはタチになることもある」
この感覚を、短いプロフィール欄で伝えようとすると「ネコ寄りリバ」になる。
「バリタチ」「バリネコ」はどう違う?
「バリ」は好みの強さを表す言い方。
バリタチはタチを強く好む人、バリネコはネコを強く好む人を指す。
ただし、ビアンの間で全員が使う言葉というわけではない。別のコミュニティでも見かける表現だし、どこまでを「バリ」とするかも人による。
「絶対にタチしかしない」という意味で使う人もいれば、ほとんどタチという程度で使う人もいる。
そのため、募集文で役割が細かく指定されている場合は、言葉だけで完全に判断しないほうがいい。
フェムタチ、フェムネコ、ボイネコ。二つの情報を一度に伝える言葉
ここまでの話がわかれば、組み合わせは難しくない。
フェムタチはフェム系の見た目や雰囲気でタチの人。
フェムネコはフェム系でネコの人。
ボイネコはボーイッシュな雰囲気でネコの人。
「ボイなのにネコなの?」と感じるなら、それはボイとタチを無意識に結びつけているからかもしれない。
見た目と性的な好みは別。だからこそ、わざわざ二つを組み合わせた表現がある。
募集掲示板では、この違いが結構大きい。
「タチの方募集」なら役割についての希望が中心。
「フェムタチの方募集」なら、役割だけでなく外見や雰囲気にも希望がある。
ほんの数文字増えただけで、募集条件が変わっている。
とはいえ、フェムタチと書いてある人全員が同じ服装をしているわけではないし、好みの細部まで一致するわけでもない。
言葉は入口。実際にどんな人かは、やり取りをして初めてわかる部分も多い。
「ノンケの女の子が好き」。このノンケって?
今度は見た目や役割から離れて、恋愛対象の話。
ノンケは異性愛者を指す俗語。女性について話す場合なら、男性を恋愛対象とする女性を指すことが多い。
バイはバイセクシュアルの略で、複数の性別の人に恋愛感情や性的な魅力を感じる人。
ビアンはレズビアンの略で、女性を恋愛対象とする女性。
言葉の説明だけなら簡単なのに、実際のプロフィールでは誤解が起きやすい。
例えば「以前は男性と付き合っていました。今は女性としか付き合いたいと思いません」という女性。
男性との交際経験があるからノンケ、とはならない。
逆に、女性と付き合ったことが一度もなくても、自分はビアンだと認識している女性はいる。
交際経験と性的指向は別の話だ。
「ノンケ落ち」という言葉もある
ノンケだと思われていた女性が同性を好きになったり、同性との恋愛関係になったりすることを指して使われる表現。
ただ、この言葉は少し慎重に扱いたい。
周囲がノンケだと思っていただけで、本人は以前から女性にも惹かれていた可能性があるからだ。
誰かと付き合ったという事実だけで、その人の性的指向を周囲が決めることはできない。
「純ビアンです」には、実は決まった定義がない
ビアン向けのプロフィールで「純ビアン」「生粋」という言葉を見かけることがある。
この言葉、何をもって純とするのだろう。
男性と付き合った経験がないこと?
男性との性的経験がないこと?
それとも、昔から女性だけを好きになってきたこと?
使う人によって意味が違うので、実は一つに決められない。
ここは言葉の意味以上に、受け取られ方が気になるところ。
「純ビアン」という表現を好んで使う人もいる一方で、男性経験のあるビアンが純粋ではないように聞こえると感じる人もいる。
男性と付き合っていた時期があっても、結婚経験があっても、現在自分をビアンと認識している人はいる。
その経験を理由に、ビアンとしての正しさを比べることはできない。
もしプロフィールで男性との交際経験がないことを伝えたいなら、そのまま「男性との交際経験はありません」と書く方法もある。
自分が何を伝えたいのか。言葉を選ぶときは、そこを考えたほうが伝わりやすい。
「クエスチョニング」と書いてある人は、何を迷っている?
「女性を好きになったことはある。でも、自分がビアンなのかバイなのかはわからない」
そんな人が使うことのある言葉がクエスチョニング。
自分の性的指向や性自認について、まだはっきりしていない、あるいは考えている途中の状態を表す。
ただ、全員が「答えを探している途中」というわけでもない。
一つの言葉に決めたくない人もいるし、今は特定の分類を使わずにいたい人もいる。
プロフィールにクエスチョニングと書かれていたら、そこには本人なりの事情や考えがあるのだろう。
「ビアンなの? バイなの? どっち?」と結論を迫るより、その人が今どういう相手と出会いたいのかを聞いたほうが話は進みやすい。
恋愛対象を表す言葉がまだ決まっていなくても、誰かを好きになる気持ちは存在するのだから。
「セクマイ友達募集」は、恋人募集とは限らない
SNSで見かける「セクマイ」。
これはセクシュアルマイノリティの略で、性的指向や性自認などに関する少数者を広く指す。
ビアンもバイも含まれるけれど、セクマイ=ビアンという意味ではない。
例えば「セクマイ友達募集」という投稿。
恋愛相手を探しているとは限らないし、女性同士の恋愛を希望する人だけを対象にしているとも限らない。
同じような悩みを話せる友達がほしい。趣味の合う人とつながりたい。普段は話せない恋愛の話をしてみたい。
そういう目的で使われることもある。
オフ会に行けば恋人が見つかる?
オフ会は、ネット上でつながった人たちが実際に集まる会のこと。
ビアン向けのオフ会にも、友達作りが中心のものや恋活を目的としたものなど、いろいろな形式がある。
「ビアンオフ会」という名前だけで恋人探しの場だと判断すると、当日の雰囲気が想像と違うこともあるだろう。
参加条件や開催目的は事前に確認しておきたい。
それと、写真撮影やSNSへの投稿には注意が必要だ。参加者全員が周囲に性的指向を公表しているとは限らない。
この話は、次の三つの言葉につながってくる。
クローゼット、カミングアウト、アウティング。ここは覚え間違えたくない
例えば、こんな状況。
Aさんは友達にはビアンだと話している。でも会社では話していない。
この場合、Aさんは友達にはカミングアウトしている一方、職場ではクローゼットという状態になる。
カミングアウトは、自分の性的指向や性自認などを自分の意思で誰かに伝えること。
クローゼットは、それらを周囲に公表していない状態を指す。
つまり、カミングアウト済みかどうかは相手によって違う。
友達には話せても親には話せない。SNSでは公表しているけれど、職場では伏せている。そういう人もいる。
では、アウティングは何か。
Aさんから「女性と付き合っている」と打ち明けられたBさんが、本人の了承を得ず、会社の同僚にその話をしてしまった。
これがアウティングに当たる場合がある。
「仲がいいから大丈夫だと思った」「悪気はなかった」では済まないこともある。
ビアン向けの掲示板やSNSでも同じ。
ネット上に書いてある情報だからといって、本人の家族や知人に知らせていいとは限らない。写真やアカウント名を別の場所へ転載することにも注意が必要だ。
誰にどこまで話すかを決めるのは本人。
この三つの言葉は、単に意味を知るだけでなく、その違いを理解しておきたい。
で、最初の募集文はどういう意味だった?
もう一度だけ、冒頭の文章を見てみよう。
フェムタチです。ネコ寄りリバの方だと嬉しいです。
この女性は、自分の見た目をフェム系だと説明し、親密な関係ではタチの立場を好むと伝えている。
そして相手には、両方の役割を好む、または対応できる人の中でも、ネコ寄りの女性を希望している。
ここまで読めれば、募集文の意味はかなりつかめる。
ただし、その女性がロングヘアなのかショートヘアなのか、普段は甘えたいタイプなのか、どんな恋愛をしたいのかまではわからない。
それは用語の外側にある話だ。
ビアン用語を知っていると、プロフィールを読むのが少し楽になる。でも、用語を全部知っていることと、相手のことを理解していることは別。
知らない言葉が出てきたら調べればいいし、意味が曖昧なら相手との会話の中で確かめればいい。
言葉を覚えることが目的ではなく、相手が伝えようとしていることを読み違えないための用語集。
そんなふうに使ってもらえたら嬉しい。